ライソゾーム病は、ライソゾーム酵素の遺伝的欠損により基質が細胞内に蓄積し、進行性の臓器障害や神経症状を引き起こす難治性疾患群です。なかでもGM2ガングリオシドーシスに分類されるテイ?サックス病(Tay-Sachs disease)およびサンドホフ病(Sandhoff disease)は、乳児期に発症することが多く、重篤な中枢神経症状を呈しますが、現在も根本的治療法は確立されていません。これらの疾患は、GM2ガングリオシドの分解に必須なβ-ヘキソサミニダーゼA(HexA)というライソゾーム酵素の欠損を原因としています。
川崎医科大学の北風圭介助教、徳岛大学大学院の大西恭弥博士後期課程学生(当時)、辻大輔助教(現 安田女子大学講師)、伊藤孝司教授(現 徳岛大学名誉教授?自治医科大学客員教授)らの研究グループは、自治医科大学の村松慎一客員教授などと共同で、改変型HexB(modHexB)をコードするアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いた新規遺伝子治療法を開発しました。本研究では、サンドホフ病モデルマウスへの脳室内投与により酵素活性の回復とGM2の減少を認め、運動機能の回復および生存期間の延長を確認しました。さらに、カニクイザルおよびラットを用いた前臨床試験により、中枢神経系への広範な遺伝子導入と良好な安全性を示しました。この成果は、GM2ガングリオシドーシスに対する新たな遺伝子治療戦略の有効性と安全性を示すものであり、将来的な臨床応用への展開が期待されます。
本成果は、2026年4月23日に「Cell Reports Medicine」にオンライン掲载されました。
難治性小児神経疾患に対する新規遺伝子治療法を開発~改変型酵素を用いた治療戦略の有効性?安全性を前臨床で実証~ (PDF 411KB)
