生物の环境适応性を脂质多様性から纽解き、配列変异を导入した非天然脂质の研究に発展
环境适応の键である脂质に着目

「膜を作るリン脂質にも種類がたくさんあり、 個々の脂質はいろ
いろな役割と机能を果たしています。それぞれ脂质の个性を见出す
ことを目的にこれまで研究してきました」という松木先生。
深海や高山、塩湖や温泉など様々な环境下に生物が生息する谜を、系统的な脂质研究によって解明しようと取り组む松木先生。
「人间の体内には约37兆个の细胞があり、高山へ行けば低圧、低酸素、深海では高圧、低温といったように、细胞すべてが环境変化の影响を受けます。
细胞を构成する4大生体分子(核酸、蛋白质、糖质、脂质)それぞれに热を加えると、核酸は壊れ、蛋白质や糖质は固まり、脂质は固まっているものは溶けてしまいます。この中でどれが一番、环境に适応しやすい分子なのか、実は我々が生活に利用している0?100℃くらいの温度の范囲ではよくわかりません。
しかし圧力をかけると、キレイに相関が见えてきます。核酸は1万気圧でもほとんど壊れません。それに対し、蛋白质は5千気圧、糖质は大体3千気圧で変化が起こりますが、脂质は1千気圧以下の低い圧力でも変化します。
また生体分子の构成単位数に着目すると、脂质は核酸(5种类)や蛋白质(20种类)などに比べるとかなりの数があって、人の体内だと赤血球で600、体の中で3千、いろいろ细かいものを合わせると2万くらいもあります。これは、脂质多様性と呼ばれています。
このように脂质は、たくさんの种类があって、少しの温度差や気圧の変化に応じて最も早く変容する性质を持っています。この性质こそが生物の环境适応性を解く键と考え、脂质に着目した研究を始めました」。
生体膜脂质は个々の个性を発挥して机能する
脂质は疎水性相互作用という弱い结合で集まった集合体です。この特性により、细胞膜などの膜を作ることができます。
细胞膜は分子が互い违いに向かい合って、2次元の绒毯のように平面上に広がっています。これを脂质二重膜といい、脂质の种类は际限なくあることから、机能に合わせて构造化しています。
脂质の中でも膜を作っているのは、リン脂质という脂质で、リン脂质は疎水基と亲水基の両方を持ち、头(极性头部)に疎水锁という足が2本ついているような构造をしています。足が2本あることで二重膜小胞というドーナツ状の轮を作り、内侧が水、外侧が水という膜の构造を作ることができます。
こうした二重膜构造体は人工的に作ることができるので、それが环境にどのように応答するのか実験により调べれば、脂质の环境适応性を评価できます。
脂质は数℃くらいの狭い温度変化で、ある状态からある状态へと一気に変わります。
さらに500気圧、千気圧と圧力をかけていくと、互い违いに向き合った状态で形成されていた膜が入れ子构造のようになるものもあります。
温度と圧力の双方で测定した状态変化のデータを、ある脂质膜が取りうる状态(すなわち环境适応性)として図にしたものが図1です。

松木先生は膨大な種類の脂質を研究するためには、まず基準となる脂質を決める必要があると考え、対象となる标準的な脂質の選定を試みます。
「生体内の脂质の疎水锁の长さは14?20くらいが90%。その中で16と18が4?5割くらいなので、疎水锁16のパルミチン酸、极性头部は真核生物においてはコリンが主体であるという事実から、ジパルミトイルホスファチジルコリン(以下顿笔笔颁)を基準脂质とした研究の成果を、先代の金品昌志教授と共に1992年に『顿笔笔颁二重膜の膜状态の报告』として発表しました。
しかし残念なことに、同じ内容の研究が1986年に既に报告されていました。
それから10年以上を费やし、より精密な実験を重ね、2005年に『顿笔笔颁二重膜の全膜状态の规定』を発表し、研究の根干となった脂质の膜状态を完全决定し、当时の雪辱を果たしました」
新たなテーマは配列変异を导入した非天然脂质

図2 脂质分子のモジュール构造に配列変异を导入した非天然脂质の一例:リン酸と极性基の配列顺序を
入れ替えた极性头部転置型脂质。生物の环境适応性に脂质多様性がどう関係しているのか、その解明に
新たな视点からチャレンジしていきます。
基準脂质を顿笔笔颁と决めたことで、研究は加速度的に动き出します。脂质分子の官能基部分(モジュール)である疎水锁の长さを短くする、长くする、疎水锁の结合様式を変える、极性头部を大きくする、小さくするなど、モジュールの构造を様々に组み替えたパターンで圧力や温度を変えてデータを収集。膨大な研究データを集积し、状态図にして比较することで、どれがどういった环境変化に适応するのか分かるようになりました。
この長年にわたる研究は、2019年度日本熱測定学会 学会賞(リン脂質二重膜相転移の熱力学的研究)、2020年度日本高圧力学会 学会賞(高圧力下におけるリン脂質二重膜相転移の研究)の受賞に繋がり、昨年度は徳島県科学技術大賞(生体膜脂質が形成する二重膜の膜状態に関する研究成果)も受賞しました。
数多くの卒业生?修了生のこれまでの貢献に感謝しながら受賞を喜びつつ、今は新たな研究に取りかかっているという松木先生。
「脂质分子のモジュール构造の配列様式は、微生物から人间に至るまで、全部同じです。これは一体どうしてなのか?
これまで我々は天然脂质の范囲で、足の长さを変えたり、头を大きくしたりなどの研究を行ってきました。モジュールの顺序を変えたり、天然にはない结合様式にしてみたり、疎水基をなくしたり???そうなった时に膜の状态がどう変わるか。これまで蓄积したデータと照らし合わせることで、『なぜ、脂质はこのような构造をとるのか』という答えが出るのではないかと考えています」。
モジュール配列変异を导入した非天然脂质の环境依存性について研究することで、思いも寄らない他の用途が见つかるかもしれません。
松木 均(まつき ひとし)のプロフィール

生物资源产业学部 教授
