大学院医歯薬学研究部 人類遺伝学分野 准教授 増田清士
肺腺がんの早期から不活性化される新规がん抑制遗伝子の発见
【研究グループ】
- 徳岛大学大学院医歯薬学研究部 人類遺伝学分野 井本逸勢
- 徳岛大学大学院医歯薬学研究部 胸部?内分泌?腫瘍外科学分野 丹黒章
【研究経纬】
肺腺がんは日本人の肺がんのなかで最も発生頻度が高く、年々増加しています。新しい治療薬の開発によって、以前に比べて治療成績は向上していますが、いまだ充分なものとは言えません。また、初期症状も乏しいことから、早期診断に結びつく分子マーカーの開発が望まれています。この度、徳岛大学大学院医歯薬学研究部の井本逸勢教授、増田清士准教授(人類遺伝学分野)、丹黒章教授、梶浦耕一郎助教(胸部?内分泌?腫瘍外科学分野)らの研究グループは、喫煙者?非喫煙者にかかわらず高頻度に発症する肺腺がんの発がん?進展に新たながん抑制遺伝子TRIM58の不活性化が関与していることを見いだしました。TRIM58は、喫煙の有無に関係なくがんの早期からDNAメチル化という仕組みで働かなくなっており、本研究成果は、この遺伝子変化を標的にした肺腺がんの早期診断や新規治療法開発への応用が期待されます。
【学术誌等への掲载状况】
Frequent silencing of the candidate tumor suppressor TRIM58 by promoter methylation in early-stage lung adenocarcinoma. Koichiro Kajiura, Kiyoshi Masuda, Takuya Naruto, Tomohiro Kohmoto, Miki Watanabe, Mitsuhiro Tsuboi, Hiromitsu Takizawa, Kazuya Kondo, Akira Tangoku, Issei Imoto. Oncotarget. 2016 Dec 1.
【研究の背景】
肺腺がんは早期発见が难しいだけでなく、进行が速く、周囲のリンパ节や远隔転移がおきやすいため、これまで予后が悪いことが知られていました。最近では、早期诊断、手术方法、抗がん剤治疗の进歩により生存率が向上していますが、充分なものとは言えません。また最近になって、大肠がんや乳がんなどに用いられているような分子标的薬が登场しましたが、その対象となる患者は限られており、新たな诊断マーカーや治疗标的の开発が望まれています。
顿狈础メチル化は、顿狈础に保存されている遗伝情报の読み出しを抑制する仕组みで、発生や体内の恒常性を维持する重要な分子机构を担っています。この顿狈础メチル化に异常をきたすと、がんや代谢疾患、免疫疾患、精神疾患などの様々な病気の原因となることが知られています。特にがん细胞では様々な癌抑制遗伝子の不活性化に顿狈础メチル化异常が関与していることから、これを详しく调べることで有望な诊断や治疗标的の発见につながると考えられていますが、その详细はよくわかっていませんでした。
【结果の概要】
本研究グループは、肺腺がん手术组织を用いた解析から、喫烟者?非喫烟者にかかわらず早期に顿狈础メチル化がおこり、肺腺がんで特异的に不活性化されている遗伝子を复数见いだしました。さらに公共データベース情报やがん细胞を用いた検証を行い、これらの遗伝子の中から顿狈础メチル化によって不活性化される新たながん抑制遗伝子として罢搁滨惭58を同定しました(図1)。検讨を行った全ての肺腺がん组织内で罢搁滨惭58遗伝子上流の顿狈础にメチル化が起こっており(図2)、これにより罢搁滨惭58遗伝子発现が低下していることを确认しました(図3)。




そこで罢搁滨惭58を高発现している肺腺がん细胞株を作製し、解析を进めたところ、罢搁滨惭58はがん细胞の増殖や肿疡の形成を抑制することを明らかにしました(図4)。一方罢搁滨惭58の机能部位に変异を导入すると、このがん抑制机能が不活性化されることも确认しました。罢搁滨惭58によるがん抑制机构の详细を明らかにするために、罢搁滨惭58を高発现する细胞内の遗伝子発现を调べたところ、细胞间や细胞と间质の间の结合を调节する遗伝子群の量が変化していました。がん発生初期に组织构造が崩壊することが知られており、がん初期における罢搁滨惭58の不活性化がこれらの一因であることが考えられます。
今回の结果から、罢搁滨惭58は喫烟の有无にかかわらず、がんの早期から顿狈础メチル化によって不活性化されることが示されました。このことは、この遗伝子変化が肺腺がんの早期诊断マーカーになりうることを示しています。また癌细胞特异的に罢搁滨惭58の発现を诱导することで、肺腺がんの进行を効果的に抑制できる可能性があります。罢搁滨惭58の不活性化はほとんどの肺腺がんで共通していることが考えられ、今回明らかにしたがん抑制机构を标的とした新薬は広范囲の肺腺がん患者に効果が期待されます。今后研究グループでは、罢搁滨惭58を指标とした早期诊断法の确立を目指すと共に、罢搁滨惭58の细胞内机能を特异的に制御する分子を特定することで、肺腺がんに有効な治疗薬の开発を进めていきます。
