最先端研究探访 (とくtalk123号 平成18年4月号より)

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ゲノム機能研究センター 遺伝子実験施設
高浜 洋介 たかはま ようすけ

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生命システムの个性と自己识别

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胸腺を知っていますか?

人のからだは、ウィルスなど外部からの侵入者(他者)から自己を防卫するはたらき(免疫力)を持っています。しかし、この免疫力が逆に病気の原因となったり输血や移植の妨げになったりする场合があります。免疫力のもととなる细胞(白血球)が、どのようにして自分のからだを伤付けずに外部からのものに反応するのか、自分と自分以外とをどのようにして判别しているのか、そのメカニズムはまだまだ未知の领域です。

高浜先生の研究はこの未知の领域、生体防御システムへのアプローチです。このシステムを理解することは、たくさんの免疫病やアレルギー疾患の根本的な治疗と予防にむけて必要ですし、また、移植や再生医疗の効果的な発展につながると期待されます。

からだが自分と他者をどのように见分けるのか、その研究の键を握るのが「胸腺」です。胸腺は、私たちの胸の中のほぼ中央、心臓の上にかぶさるようにある臓器です。子供のころはしっかりと大きくて、30グラム程度にも达する臓器ですが、思春期を过ぎるころから小さくなり、大人ではほぼ脂肪のかたまりのように小さくなってしまいます。しかし胸腺は、実は、私たちの免疫力をつくりあげるためにはなくてはならない大切な臓器なのです。

高浜先生が研究しているのはこの胸腺の働きです。

白血球が体内に侵入したウィルスなどと闘うことは良く知られています。各种の白血球は、骨髄で作られ、身体のあちらこちらに送られて、それぞれの场所で外部からの侵入者と闘うのです。白血球にはいくつかの种类のリンパ球が含まれています。

それらリンパ球の中で一种类だけ、体内で骨髄とは违った场所で育つリンパ球があります。罢リンパ球です。罢リンパ球だけは、骨髄で生まれて间もない段阶で胸腺に送られるのです。罢は胸腺(罢丑测尘耻蝉)の罢をとって名付けられました。この罢リンパ球こそ、自分と自分以外とを见分ける能力をもつ细胞です。そして、この能力を罢リンパ球に教えるのが胸腺です。

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胸腺はリンパ球のトレーナー

高浜先生が研究しているのはこの胸腺の働きです。

あえて例えるとすると、胸腺は罢リンパ球の学校です。胸腺に送られた幼い罢リンパ球は、胸腺学校の中で育ち成熟するとき、胸腺の中で実に大切なことを学ぶのです。それは、自分とは何かということです。

胸腺は、幼い罢リンパ球を育てて一人前にして全身へと送り出しますが、罢リンパ球が胸腺から出ていったときに守るべき自分のからだとは何かを彻底的に教えます。胸腺はこの目的で、ちょうどデパートのように、自分のからだのありとあらゆる分子を陈列して罢リンパ球にみせる机能を持っています。

また、ちょうど学校にも小学校や大学があるように、胸腺のなかにもいくつかの异なる教育の场を备えています。幼い罢リンパ球専用の教育の场があり、一人前直前の罢リンパ球がいる専用の场があるのです。多くの罢リンパ球の中でも、胸腺学校の全课程を卒业できるものはごくわずかです。それは全体の1%程度というのですから、胸腺から出ていく罢リンパ球は、そのひとのからだを守るために选び抜かれたエリートの精鋭集団と言えるかもしれません。

胸腺を出た成熟した罢リンパ球は、叠リンパ球など他の白血球と同じように血管やリンパ管をたどって、身体の要所に配置されます。そしてからだを守るのです。罢リンパ球は人が大人になるまでには必要な数が身体に备わります。胸腺はその役目を终えて小さくなっていくのです。ただこれは休火山のようなもので、身体に异変があり、罢リンパ球がいざ必要となれば、その机能を復活させるそうです。

ここまで胸腺のはたらきは解明されていながら、罢リンパ球がどのようにして胸腺に导かれるのか、あるいは卒业した罢リンパ球がどのようにして血液やリンパ液の中にもどっていくのか、また胸腺の内部でどのように罢リンパ球を教育するのかの详细なメカニズムなど、まだまだ不明な点は多いのです。

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上 研究中の様子、下 研究スタッフ

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基本をだいじに、前向きに!

高浜先生は、胸腺が幼い罢リンパ球を呼び寄せたり、胸腺のなかでの教育の场を移动させたりする分子(ケモカイン:特定の白血球に作用し、诱引するタンパク质)を次々と発见しています。しかしながら、それでもなおかつまだその道は远いのです。

ごくまれに生まれつき胸腺がない场合があります。逆に胸腺が肥大化したり机能に変调をきたしたりして、重症筋无力症など自分で自分の组织を伤付けてしまう自己免疫疾患がもたらされてしまう场合もあります。したがって胸腺や罢リンパ球教育についての研究には多くの期待があります。罢リンパ球が自己の组织を攻撃するような性质をもってしまう自己免疫疾患が起こったときにも、人為的に胸腺の机能をリセットして罢リンパ球を再教育させることができたら、多くの难病に対処できるかもしれません。

胸腺の研究のために、高浜先生の研究室ではメダカを饲育しています。人间と同じ脊椎动物でありながら、マウスなどの小动物に比べても、メダカは狭いスペースで饲うことができ、また多产であるため研究に必要な数がそろうためです。さらに身体が透明に近く、からだの奥にある胸腺のできかたや机能の観察がしやすいという利点があります。この小さな生命がその何百倍もある私たちの身体の谜を解くために役立っていることや、胸腺という闻き惯れない小さな臓器が「自分とは何か」といった大それたことを教えているといったことを考えると、生命の不思议さに改めてとりこになってしまいそうです。

「基本を见失わないように、根本的な疑问と向き合うことを大事にしています。近ごろは、ともすれば近视眼的で表面的な成果を追いかけまわす风潮もありますが、本当に大事なことを见据えた基础研究を息长く取り组んでいきたいと思います」と、高浜先生は今日も小さなメダカたちの小さな水槽の前で目を辉かせています。

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『私たちは胸腺を兴味の中心に据え、「なぜだろう?なぜかしら」という个人个人のすなおな疑问にすなおに立ち向かうように心がけています。サイエンスは、あくまでも个々の人间による知的活动であるという基本スタンスに立ち、その个人が共同で生体のあらたな仕组みを解き明かしていくことによって、人类の知的财产にすこしでも贡献したいと考えております』

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[取材] 123号(平成18年4月号より)

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