最先端研究探訪 (とくtalk135号 平成21年4月号より)

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大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 精密薬品製造学分野
落合 正仁 おちあい まさひと

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有机化学反応の未踏领域に挑戦

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日本の资源ヨウ素の有効利用と开発

私たちの身の回りのほとんどの物がいわゆる化学合成物质です。合成物质とは复数の分子が化学反応によって、他の新しい物质に生まれ変わってできる物で、例えばもっとも身近なプラスチック(合成树脂)や病気のたびにお世话になる医薬品などは、まさに化学合成の产物です。そこで化学者たちは日々、新しい化合物の开発に取り组んでいるわけですが、その根干にあるのが化学反応の研究です。化学反応と言っても、何と何を反応させればどんな物ができるかといった研究と、化学反応そのものの効率を良くしていく研究があります。

落合先生の研究は、専门的に言いますと『超原子価ハロゲン族化合物の合成とその特性を活用する有机合成反応の开発研究』。つまり医薬品などの化合物を効率良く製造していくために、化学反応を速めるハロゲン族の分子化合物を作り出し开発研究しているということです。

ハロゲン族元素とはフッ素?塩素?臭素?ヨウ素で、落合先生はその中のヨウ素の有効利用法に取り组んで30年になります。ヨウ素に着目したのは先生が米国から帰ってまもなくで、まだヨウ素の研究をしている化学者が少ないことと、チリと日本(千叶県)、そして米国が世界の叁大资源国だということからです。ヨウ素は天然ガスと共に採取される化石海水に多く含まれています。しかしながら日本ではそのほとんどが原材料のまま输出され、ヨウ素を含んだ高価な製品を输入しているのです。したがってヨウ素の有効利用は我が国にとって重要なことなのです。

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未踏化学领域"叁価の超原子価臭素化合物の化学"への挑戦

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教科书を书き换える発见

1985年、落合先生は超脱离基と名付けた毒性の低い『3価の超原子価有机ヨウ素化合物』を使った化学反応の実験により、それまで化学の教科书に载っていた定説を覆す発见をしました。しかし定説を破るというのは、最初は常识に対する非常识のようなもので、先生自身がこの结果を受け入れるのに5年かかり、结局教科书の内容を书き直すには15年もの年月を费やしてしまったほどでした。

その定説とは『オレフィンの厂狈2反応は立体的要因により不可能』というものです。かなり乱暴にわかりやすく言えば、化学反応とは、ある分子と分子が混じり合うことにより分子の一部が置换したり脱离することで、分子构造の违う别のものとなることですが、二重结合を持った分子(オレフィン)では立体的な理由により、厂狈2反応(専门用语は二分子求核置换反応?きゅうかくちかんはんのう)は起こらない、というのが40年以上信じられてきたことだったのです。ところが3価の超原子価ヨウ素は、オレフィンの厂狈2反応を可能にしたばかりか、脱离基として一般に使われるトリフラートという置换基の百万倍の脱离能力(化学反応のスピード)を持っていたのです。

さらに爆発しやすいオゾンに代わり、安全で环境に优しい酸化的切断反応の开発や、超原子価ヨウ素を用いた酸化反応の触媒化に世界で初めて成功するなど、次々と新しい开発をしてきました。

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化学者の梦を追って

さて超原子価ハロゲン族化合物は他のものもこうした能力を持っていると考えられていますが、化合物そのものを作り出すのが难しく、次に先生が取り组んでいるのが臭素です。臭素はどこにでも无尽蔵にある天然资源で、ヨウ素より遥かに高い化学反応を示すことがわかっています。しかし臭素はヨウ素と违って毒性が强く、取り扱いの勉强にドイツまで学生と一绪に出かけて、やっとスタートできたという苦労もありました。

その结果、これまでは全く未知の化合物であった超原子価臭素化合物の合成にも世界で初めて成功するなど、新しい研究领域をさらに拡げつつあります。

おおよそ学者と呼ばれる人たちには大きな梦、というか目标があります。それは『新しい発见』です。过去の学者の学説を上回るような発见や、误りを订正するような発见、あるいは今までにない全く新しい発见。その梦とロマンを胸に秘め、日々研究を続けているのではないでしょうか。

「化学物质というと公害や汚染の元のような悪いイメージがあるのは残念ですが、有机化学では『幸运に恵まれた偶然の発见』を大切にします。有机化学はこの世にないものを作り出すことができます。化学反応はその有机化学の基盘です。新しい薬の开発だけでなく様々なものに応用できるよう贡献していきたいです」

世界におけるヨウ素?臭素研究の第一人者として活跃する化学者の目に、芸术家のような想像と创造力の光が见えたような気がしました。

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落合 正仁氏のプロフィール

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  • 1948年 三重県生まれ
  • 1970年 名古屋市立大学薬学部卒業
  • 1975年 京都大学大学院薬学研究科博士課程退学
  • 1975年 京都大学化学研究所文部技官
  • 1977-79年 米国ウイスコンシン州立大学博士研究員
  • 1984年 京都大学化学研究所助手(抗癌医薬開発研究部門)
  • 1987年 日本薬学会 奨励賞受賞
  • 1989年 岐阜薬科大学助教授(合成薬品製造化学教室)
  • 1992年 徳岛大学薬学部教授(薬品製造化学教室)
  • 2004年 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部教授(改組)
  • 2002年 ヨウ素学会 学会賞受賞
  • 2003年 日本薬学会 学会賞受賞

[取材] 135号(平成21年4月号より)

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